2018年5月13日に開催された第4回インバウンド実務主任者実務試験に無事合格できました。試験の手ごたえや傾向や対策など調べてもほとんど見つからないので、(あっても資格マニアの方や第1回の試験の感想くらい)これからこの試験を受験しようと考えている方のために完全攻略法を紹介します。難易度の参考にもして下さい。
目次
1.インバウンド実務主任者認定試験とは?
2.試験情報
3.資格ゲットのメリットは?
4.具体的な試験対策
(1)傾向
(2)各課題別対策と参考書籍
(3)結局最速の勉強法は?
(4)それでも不安な場合は…
5.資格を取ってからが本当のスタート
1.インバウンド実務主任者認定試験とは?
本試験を通してインバウンドの現状と動向、インバウンドビジネスの実際と対策、インバウンドの集客、訪日外国人の理解と対応、ニューツーリズムや観光街づくりについての知識を学びます。インバウンドビジネスに携わっている方は本試験を通して必須の知識を身に付けましょう。
インバウンド(外国人観光客を日本に集客すること)に関しての基礎的な知識、各国の特徴と傾向(消費動向、観光ルート、文化、宗教、食の好みなど)、訪日観光客への対応と理解、国の施策、法令、先進事例などについて全体的に熟知している事を証明する資格になります。
今後、インバウンド事業を推進していく意志のある人、観光業界やインバウンド業界で働きたいと思ってる人、地域ぐるみで外国人を受け入れたいと考えている自治体関係者など多くの人に必須の資格と言っても過言ではありません。
では詳細を見ていきましょう。
2.試験情報
公式HPにちゃんと記載されているので、まずはそちらを確認。特に合格基準、問題数、加点制度(特定の語学資格を持っていれば全体の点数に6点プラスされる制度)はしっかりチェックしておきましょう。また加点制度は英語に限らず中国語や韓国語、ドイツ語などの語学資格も対象になっているので該当する人は必ず申請しましょう。
受験票への顔写真の貼付け、試験当日身分証の持参など忘れると受験できない可能性がある場合もあるので、当日必要なものもチェックを忘れずに。
合格発表は試験日から1ヵ月程先ですが、解答速報は全情協BQMで試験日当日に発表されます。この試験は問題用紙を持ち帰ることができるので、試験時にマークシート+問題用紙にも丸つけをするとその日にどれくらいの成績か自己採点でチェックすることができます。
3.資格ゲットのメリットは?
まず、合格証書、合格カード、合格ロゴ、がそれぞれもらえます。合格ロゴはデータをダウンロードできるので名刺やプロフィールにも利用可能。もちろん就職面接の資格欄に記入することもできます。また、試験勉強をすることでインバウンドに関する幅広い知識を習得することができます。(後述しますが、最新動向は常に追っていく必要があります。)
それにインバウンド業界はまだ伸びしろのある比較的新しい業界です。これからインバウンド業務を始めたい、という方もたくさんいらっしゃいます。そういう方達に向けて、インバウンド講習を開催する際にもインバウンド実務主任者の資格を持っていると有利です。
4.具体的な試験対策
実際に出題された問題を掲載することはできませんが、全体的な流れ、抑えるべき点などは伝えられます。実は私、第3回の試験、2点足りずに(自己採点)落ちています(泣)第3回、第4回と合計2回受けたことでわかる傾向と対策もありましたので紹介します。
(1)傾向
近年のインバウンド業界の動向だけでなく、どうして今、国がインバウンドに力を入れているのか、歴史的変遷も交えて知っておく必要があります。日本史や世界史の勉強と一緒ですね。
インバウンドの歴史で言うと、2003年に小泉純一郎政権で開始されたビジット・ジャパン・キャンペーンがあり、2010年までに訪日外国人観光客を1000万にするという目標が掲げられました。そして、2020年東京オリンピックを控えた今、オリンピックまでに4000万人の訪日外国人観光客を呼び込む、という目標に向かって国全体が動いています。インバウンドの歴史に加え、観光庁や日本政府観光局(JNTO)の取り組みなども把握しておく必要があります。
また、時代に合わせてインバウンドに関わる法令も変わっていきます。よくニュースなどで取り上げられている2018年6月15日から施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)もその1つの例。他にも、旅行業法、通訳案内士法などもここ何年かで大きく変わりました。(そのおかげでKuriyama Go Travelが地域限定旅行業を取得できたという背景もあったりします)
お伝えしたいことは山ほどあるのですが、とても書ききれないので必ず抑えておきたいポイントをまとめます。
・インバウンドの歴史(最初の旅行会社、ツアーは?ツーリズムは現代までにどう変化してきたの?)
・インバウンドに関わる法令(基本的には外国人観光客を受け入れやすい環境を作るための緩和措置が多い。また民泊などのグレーゾーンを白黒はっきりさせるための法律も新たに登場)
・実際にインバウンドの現場を知る(免税店の仕組み、多言語表記、国ごとに異なる外国人観光客への対応、理解、決済方法の多様化)
・インバウンド最新情報(最新の訪日外国人の消費動向、満足した食べ物、不満と期待)
・情報発信(SNSの利活用、紙媒体の情報誌、ウェブマガジン、口コミサイト、現地旅行会社へのセールス、現地マスメディアへの出稿)
・様々なツーリズム(グリーンツーリズム、メディカルツーリズム、スポーツツーリズムetc.)
・インバウンドビジネスの取組み事例
試験をパスするためには最低限上記の事は熟知しておく必要があります。
(2)各課題別対策と参考書籍
まずは公式テキストを…と言いたい所ですが、インバウンドビジネスについてあまり聞いたことがない、これから始める、という方はやまとごころ.JPを立ち上げた村山慶輔さんの「インバウンドビジネス入門講座」(2018年現在第3版)を読まれることをオススメします。
インバウンドビジネス入門講座 第3版 訪日外国人観光攻略ガイド
公式テキスト含め、その他参考書籍は、この本よりも分厚く白黒です。専門的に学べるという点ではとても優秀なのですが、初めてインバウンドビジネスに触れる方にとってはちょっと手をつけづらい印象を受けました。それに比べ、「インバウンドビジネス入門講座」は200ページちょっとでイラストやデータなどを多用しているのでとても読みやすい上に、インバウンドについて広範囲で記載されています。
インバウンドビジネス入門講座 第2版 訪日外国人観光攻略ガイド
また、2015年に初版、2016年に第2版、2018年に第3版と、時代の流れに合わせて改訂されるので、最新動向の把握にも最適です。この本を熟読するだけでも試験対策になります。特に実際の現場での受け入れ方法、情報発信の仕方などは実際にインバウンドビジネスを始める際にもとても参考になります。取り組み事例も多く紹介されているので、試験対策&インバウンドのヒントで一石二鳥。
また、インバウンドビジネスではなく、そもそも観光についてあまりよくわからない、知りたいという方は、公式テキストの著者でもある安田亘宏さんの「観光サービス論 ~観光を初めて学ぶ人の14章~」を読まれるといいと思います。観光業界には様々なプレーヤーがいます。それぞれがどんな役割があるのか、またどう観光と関わっているのかを体系的に学ぶことができます。
試験対策という意味では正直読まなくてもいいかな、と思います。ただ、観光業界に従事する方であれば読んでおいて損はないです。
さて、肝心な公式テキストですが、体感的には公式テキストを読め込めば5~6割の点数を取ることができます。ただし、テキストと同じ文章が出てくるわけではないので、ただ覚えるのではなくしっかり理解する必要があります。
また、変化がない、もしくは少ない分野に対しては公式テキストはとても有効です(インバウンドの歴史や各国の外国人の特徴など)が、消費動向などは常に更新されていきます。インバウンド実務主任者試験自体が比較的まだ新しい試験でもあり、公式テキストも2017年9月発行なので、情報は古くありません。(インバウンドビジネス入門講座のように今後改訂があるかもしれません)
公式テキストではカバーしきれないインバウンド最新動向も試験に出題されるので、観光庁から発表されている訪日外国人の消費動向年次報告書は必ず最新版をチェックしましょう。
上記のリンクにはSNSについてや免税制度や民泊新法についてのリンクも掲載されています。SNSは、公式テキストにはそれぞれの特徴などが書いてありますが、広告の種類やターゲットなどはリンク先から情報を得た方がいいです。
免税制度についても基本的な制度はテキストでカバーできますが、2018年度の税制改正(一般物品と消耗品を合算した金額が5000円以上であれば免税対象となる)については最新情報が必要ですし、住宅事業法(民泊新法)についても2018年6月から施行なので、公式テキストの情報では少し古いです。
また、第4回の試験からテーマ別選択問題が採用されています。①英語、②中国語(簡体字)、③韓国語、④インバウンド関連法規、⑤ウェブプロモーション、⑥インバウンドに関する時事から1つを選択して、その中の3問を回答します。たったの3問ですが、他の問題の配点が1点なのに対し、選択問題は各2点の配点です。
私は英語を選択して、無事解くことができましたが、他の選択肢は公式テキストだけではカバーできない専門的な問題になっています。選択ジャンルによっては、日本のSNSだけでなく各国で人気の高いSNS、インバウンドの最新時事情報や、インバウンドに関する法律の具体的内容なども問われます。
常に最新情報をチェックするため、私はトラベルボイスを定期購読(無料)しています。
(3)結局最速の勉強法は?
じゃあ結局何からやればいいんだ!?となりそうですが、やっぱり基本は「インバウンド実務主任者認定試験公式テキスト」です。同著者が「インバウンド実務論」という本も出してますが、大学の授業向けに書かれたような本でした。内容としては公式テキストと大差ないので、これは省いていいでしょう。
次に重要なのは最新の訪日外国人の消費動向年次報告書です。どの国からどれだけの外国人が日本に訪れているのかがわかるのはもちろん、買い物や宿泊の消費比率、滞在中の行動傾向などこの資料だけで多くの情報を手にすることができます。
消費動向年次報告書に加え、最新版のJNTO訪日旅行データハンドブックも目を通しておくと、国ごとの外国人の特徴だけでなく、宗教や人口、経済成長率など詳しくデータを見ることができます。こちらはインターネット上で閲覧することができます。(参考:JNTO訪日旅行データハンドブック2017)
公式過去問題集は最後の確認程度に使えばいいです。第1回目の試験の過去問が載ってますが、第3回目以降の試験の方が難しくなっています。(実際に過去問正答率95%以上でしたが、第三回目試験は見事に落ちました)また、先述したSNSの広告の種類や免税店制度などは後回しでいいと思います。試験の範囲ではありますが、出題割合としては多くないので、全体の概要を公式テキストなどで掴んだ後に、補足的に資料に目を通せば十分でしょう。
まとめると、①公式テキスト、②最新版訪日外国人の消費動向年次報告書、③JNTO訪日旅行データハンドブックがトップ3
観光業やインバウンド業界未経験の方はトップ3に加え、上記した「インバウンドビジネス入門講座」や「観光サービス論 ~観光を初めて学ぶ人の14章~」を読みましょう。
時間に余裕がある、まだ勉強し足りない、と言う方はそれぞれの分野の知識をより専門的にできるようさらに資料や参考書に目を通していただければと思います。特に公式HPに掲載されている資料はとても参考になります。
(4)それでも不安な場合は…
万全に対策をしたつもりでも…万が一ということはあります。どうしても不安な方は試験前に開催される対策セミナーの日程もチェックしておきましょう。公式テキストを使用した講習ですので、試験対策には最適だと思います。ただし、受験料で1万円(税抜き)、対策セミナーも1万円以上かかり、さらにテキスト代とかを考えると…けっこうな金額になりますよね。
2018年現在で約3ヵ月に1回のペースで試験が行なわれているので、焦らず時間と予算と相談しながら試験に臨みましょう。
5.資格を取ってからが本当のスタート
私自身、この試験を通して学ぶことが多くありました。しかし、資格を取ることが目的ではありません。学んだことを活かしてこそ意味がでてきます。KGTではEnglishページも業者に頼まずに自分達でやっていますが、これもインバウンド実務主任者認定試験の勉強がとても活きていると感じています。
データや知識だけでは外国人は呼べません。行動して初めて、外国人の目に触れて体験してもらってまた来たいと思ってもらえます。試験勉強で大量にインプットしたものを今度はアウトプットしながら活動していきましょう。(と自分にも言い聞かせております)