地元経済

地元経済を考える!日光市&栗山郷に必要な資源と人材

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地方創生が叫ばれてから何年が経ったのでしょうか。本当に必要な資源、人材とは?日光市に住んで早5年。日光市、そして栗山の地元経済を考えました。

 

よりわかりやすい解説は動画で確認!

 

1.なぜ地元経済を考えるのか?

(1)重要なのは地域に入ってくる収入ではないから

市外、県外、国外から地域に入ってくるお金、外貨はもちろん地元経済に必要な収入です。しかし、それ以上に重要なことがあります。それは、地域に入ってくるお金が地域内でどれだけ循環しているのかということであり、それを伝えたいからです。

(2)本当に必要な資源&人材の見極め

消滅可能性都市にも分類されている日光市。人口減少がさらに厳しくなる中、若い力、移住者が欲しいのはどこの地方都市でも一緒。日光市もご多分に漏れず。そして、実際問題これから先、日光市に多くの移住者を募るのは難しいという現実もあります。

地域に入ってくるお金のうち、地域内で循環していないお金は地域外に流れていきます。それを「見える化」することで、足りない資源や産業の担い手をピンポイントで発掘するための参考にしてほしいと思います。

2.稼ぐ金より循環(まわ)る金

例えば、我々Kuriyama Go Travel(以下KGT)がツアーを開催してお客様から1万円の参加費をいただいたとします。

このお金を日光市外、県外で使えば、地域経済としてはまったく潤いません。せっかく外から稼いだお金をそのまま外で使っているからです。

しかし、稼いだお金を地元の商店や飲食店で使うとどうでしょうか?

商店や飲食店、宿に払ったお金が今度は原材料の仕入れのために必要な資金となります。

民宿を例にしてみます。KGTから民宿に支払われたお金が地元のクリーニング屋、地元で採れた野菜や卵、地元に住む従業員の給料へと支払われ、さらに地元の飲食店や商店に循環していきます。

地域内で何度もお金が循環することで地域の経済は潤っていきます。地域内で何回も使われるお金は、それだけ多くの地元の人や商店、企業の収入になるからです。

地域に入ったお金が地域内で何回使われるか、これを「地域内乗数効果」と呼びます。この地域内乗数効果を上げることが、地域経済を潤すために必要なことです。

3.地域内乗数効果を上げるお金の使い方と下げる使い方

では、実際にどういうお金の使い方が地域内乗数効果を上げる、もしくは下げるのかを見ていきます。

(1)地域内乗数効果を上げる使い方(例)

・地元のおばちゃんが昔からやってるおそば屋さん
・地元の個人商店
・地元の家族経営の民宿
・地元の職人が手作りで1つ1つ売っている工芸品
・地元の小さな電気屋さんに修理を頼む
・地域に住んでいる人を雇って給料を払う

気をつけなければいけないのが、この時点では、地域内乗数効果は1です。お金を支払った先がどこでお金を使うのか、というのも重要になります。

(2)地域内乗数効果を下げる使い方(例)

・大手スーパー→地域にあるスーパーでも東京に本社を置くスーパーの場合、売上の多くを本社に計上されるため
・地域外から人を雇って給料を支払う→地域外の人がその人の地元でお金を使えば、お金の地域外流出となる。
・ガソリンや灯油など→地域外で作られた輸入エネルギーのため。
・インターネット経由で印刷会社に名刺を発注

また例外として、原材料は地域で作ってそれを地域外で売り、地域外で加工したものをまた仕入れる場合は差額分が地域外に流出しているお金となります。

例:栗山郷できゅうりを生産し、外部に1本10円で販売。→外部都市がそのきゅうりを漬物に加工して30円で栗山郷に販売。

差額の20円は外部都市に流出したお金となります。

4.地域内乗数効果の減少

多くの地方では地域内乗数効果が減少傾向にあります。どうすれば地域外へのお金の流出を止められるのでしょうか。

現状を知る意味で、有効なものとしてRESAS(リーサス)という指標があります。

地方創生の実現に向け、まち・ひと・しごと創生本部が設けているシステムである。都道府県・市区町村などの地方自治体が客観的なデータに基づく形で地域の現状や課題を把握できるようにすることを意図しているが、行政関係者以外も多くの機能を利用できる。 2016年11月現在、産業マップ、地域経済循環マップ、農林水産業マップ、観光マップ、人口マップ、消費マップ、自治体比較マップというカテゴリーに分かれている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 
なんだか小難しいことが書き並べてありますが、ここで注目するのは1つだけ。地域経済循環図です。実際に見ていきましょう。
 
RESAS 地域経済分析システムからHPに入ります。
メインメニュー→地域経済循環マップ→地域経済循環図
と進みます。
 
これは日光市の地域経済循環図です。この図は都道府県レベルと市町村レベルで見ることができるので、ご自分の住まわれてる地域の図を見ることも可能です。
 
地域経済循環図でわかることはたくさんありますが、ここで注目したいのは、右図の支出です。地域内に分配された所得がどのように使われているか、ということです。
地域外への流出(棒グラフの白い部分)が多ければ多いほど、地域外へとお金が流れ出ていっていることになります。
 
また、左上にある地域経済循環率ですが、これは日光市の数値を例にすると、日光市全体の所得(3252億円)のうち日光市の生産(2623億円)がまかなっている割合を示しています。
 
2623億円÷3252億円×100=約80.7%
日光市全体の所得の80.7%を日光市の生産が支えているということですね。
 
日光市の場合、支出の中でも「その他支出」の流出額(515億円)が大きいです。その他支出には、政府支出と地域産業の移輸出入収支額等が含まれてるので、市役所や国の出先機関等からの発注の中で、日光市で賄えるものはないか、また、地域産業の中でも日光市で補えるものはもっとないだろうか、と考えることができます。
 

5.栗山郷で養鶏場を始めたらどうなるか?

 
また、何を市外、県外で購入しているのかを個人や商店に地道に聞き取り調査をするのも有効です。
 
調査結果をまとめたとして、仮に栗山地域で例えると、栗山地域の住民約1200人が鶏卵を毎回大手スーパーで購入しているとします。その人たちが「もし地元で鶏卵作ってくれればそこで買うよ」と全員言ってくれれば
 
一人当たり月に3パック。1パック200円と換算すると
1200人×3パック×200円=720,000円
の売り上げが見込めます。
 
月72万円の売上で、経費などを差っ引いて生活していくことが可能なのか?など移住者を募るにしてもどんな産業で生活していくことができるのかを考える参考になります。
その事業が持続可能かどうか、ということを考えるにも必要なことではないでしょうか。
 

6.100円を侮ることなかれ

 
さきほどは栗山住民1200人の規模で考えましたが、これを日光市という単位で考えるとさらに経済規模は大きくなります。
日光市の人口は2020年5月の時点でだいたい80000人です。
 
 
80000人の日光市民が月に100円多く、市内で消費してもらう為に必要な産業は何なのか?
調査を進めることで、生計を立てることができ、かつ必要な産業が見えてきます。たかが100円と侮ることなかれ。
80000人もいれば月に800万円の売上になります!
 
「誰でもいいから日光市に移住して下さい!」と訴えるより、こういう指標やリサーチを利用して、地域の傾向を把握します。そうすることで特に足りない産業の人材をピンポイントで募集すれば、応募側も来やすいですし、住民側もバックアップしやすいのではないでしょうか?
 
これからますます深刻になる少子高齢化社会をどうやって明るく迎えるのか一緒に考えていきましょう!
 

7.まとめ 「地産地消」ではなく「地消地産」

 
地域でできたものを地域で消費(食べる)しようというのが「地産地消」の考え方ですが、今後地域が経済的に発展していくのに必要な考えとして「地消地産」という言葉があります。
 
これは、地域で消費しているものは地域で生産しよう!という考え方です。地域経済が潤うためにもとても大切な言葉です。自分たちが住む地域を守るため何ができるか、今一度真剣に向き合っていきましょう。
 
この記事を執筆するにあたり、参考にさせていただいた書籍は
枝廣順子さんの「地域経済を創りなおす -分析・診断・対策」です。
とても参考になるので、地域経済をより深く学びたい方はぜひご一読いただければと思います。
 
 

 

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